新しい別れと出会い  (3)

November 1792

皆が軽い夕食を済まし、コニャックを飲みながら居間で誰かが話し始めるのを待っていた。まるでしびれを切らした様に一番最初に口を開いたのはアランだった。
「もとはと言えばピエールが班長を務める区域の貴族狩りの網に隊長のご両親がかかってしまったのです。」
ピエールが 胸を張って少し自慢げに答えた。
「俺、結婚式で見た、隊長にそっくりのお母様を覚えていたんです。裏街道の夜番をしていた兵隊達が、お二人を番小屋に連れて来た時には驚いたのなんの…そこでパリ駐屯中隊長のアランに即連絡したのです。幸いバステイーユで勝利の女神と讃えられた、隊長の名前をひっぱりだしてアランが強引に書類をもみ消してくれました。」
「アラン、ピエール、それはご苦労だった。礼を言うぞ。」
アランが照れを隠す様に下を向きながら話を続けた。
「そして将軍があなた方に会いに行くと知って、護衛をさせて頂いたのです。こことパリの間には数えきれない程、検問所があります。お二人が護衛無しではとても此処に行き着くのは 不可能でした。」
「この者の言う通りだ。改めて礼を言う。」
ジャルジェ将軍が礼を言った。たとえ国民衞兵隊は親王貴族の敵であるとは言え、女子供と行動をするに当たって危険は極限に避けなければならない。軍人としてのプライドを棄ててアランとピエールに力を借りたのだろう。
「父上、何故そこまでしてここへ?」
それは皆の疑問だった。将軍は静かに溜め息を吐くと寄り添う様にして座っている夫人の手をそっと握り締めてから口をひらいた。
「私はスペインのクロティルドの所へお前の母を送って行く所なのだ。しかしこの者はお前達の顔を一目見ぬ限りフランスからは一歩たりとも出ないと駄々をこねおった。後にも先にもお前の母が我がままをいったのはこれが初めてなのだ。言う通りにするしか無かった。」
ジャルジェ将軍の瞳が優しさと愛情に満ちていたのをオスカルは見逃さなかった。
「また、何故突然に?」
「実はジャルジェ家の屋敷が反貴族の暴徒に襲われてな。もうベルサイユは危険なのだ。これ以上お前の母を危ない目に遭わせるわけにはいかないのだ。」
「母上!」
オスカルが夫人に駆け寄った。
「私は大丈夫です。ただ私を庇った使用人…このジュールの父親が命を落としてしまったのです。ジュールの母はこの子を産んですぐに亡くなっています。私の為に親無し子になってしまったこの子を残して行く訳にいきません。そこでスペインまで連れて行く事にしました。」
足元でセシルと二人で積み木で遊んでいる 大きな緑の瞳の子供を見つめる夫人の目には涙が光っていた。
「父上、何故母上と一緒にスペインに留まって下さらないのですか!もう勝敗は決まっています。このままでは無駄死になります!」
怒鳴られるかと覚悟していたオスカルをよそに将軍は何時に無く静かな口調で答えた。
「オスカル、勝ち負けだけが勝負ではない。意志を貫く事の重要さはおまえこそ知っているだろう。」
オスカルは息を飲んだ。 3年前のテュイルリー宮広場の光景が頭に浮かんでくる。オスカルに返す言葉は無かった。

「もう今日は遅い。オスカル、奥様と旦那様を客間に案内しておくれ。俺はアランに手伝ってもらってピエールとアランの寝場所を作る。」
「じゃ、 子供達は俺に任せてくれ。 こう見えても3人の子供の父だ!」
ピエールがセシルとジュールを抱き上げて子供部屋に向かった。
「私はもう一杯コニャックを頂いてからにしよう。」
将軍を一人居間に残して皆が二階に上がって行った。

***********

「母上, だだをこねたのは父上の為なのですね?」
夫人が微笑んだ。
「貴方にはお見通しのようですね。確かにあの人は死を覚悟してフランスに残るつもりです。私も軍人の妻。いずれこうなる事は覚悟しておりました。ただ、あの人に最愛の娘の子供を一目でも見せてあげたかったのです。」
夫人の蒼い瞳からは止めども無い涙が零れ落ちた。

***********

アンドレとアランはもう一つの客間で夜具を整えていた。
「アラン、本当に有り難う。」
アンドレがアランの肩を叩いた。
「なに、当たり前の事をしたまでだ。」
「それにしても…」
「なんだ?」
「護衛なら駐屯中隊長のおまえがわざわざやらなくてもよかったのではないのか?おまえオスカルに合いたくて来たんだろう?」
真意を突かれたアランは口を開けたまま言葉が出なかった。
「悪いな…こればかりはおまえに譲れないぞ!」
真っ赤な顔をして何か言おうとしているアランを残してアンドレは客間を去って行った。

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