Déjà vu (デジャヴュ)   (6)


「あのう…湯浴みの支度が出来ました。奥様、着替えはどう致しますか?」
女中がオスカルに尋ねた。
「それでは 手伝いをお願いしよう。なれないローブだ。脱ぎ方さえ解らん。」
「じゃあ妻を頼みます。」
アンドレはバルコニーの椅子に一人腰を下ろし、女中に導かれて行くオスカルの後ろ姿を見つめていた。しなやかな体を包む絹のローブが細いウェストで縊れ、緩やかな曲線をえがいて揺れている。オスカルは何時でも美しかったが今夜のオスカルの優美さは格別だった。

今までの従僕としてのアンドレはオスカルを見つめる男達の熱い眼差しを見て見ぬ振りせねばならなかった。しかしこれからの夫としての自分はどうなのだろう? 男の欲望の目が自分の妻に注がれると思うだけで嫉妬に気が狂いそうになる。人を愛しすぎる事があり得るのならそれは今の自分だと思った。

***********

そんな止めども無い思いにふけっていると、人の気配を感じて振り返った。 

其処に立っていたのは紛れもない,いつか見た修道僧であった。
「あ…貴方は…聖エイダン様!貴方が何故此処に?」
「やあ、又会いましたね。」
まるで町中で顔見知りにでも出会った様に涼しい顔をしている修道僧にアンドレは言葉が見つからなかった。
「本当によかったですな、貴方の長年の夢がかなって。」
あの日とまったくかわらない白髪の神父が顔をくしゃくしゃに綻ばせて微笑んだ。

「聖エイダン様,私はずっと貴方にお礼をしたかったんです。此処何年もの間,辛い事も沢山有りました。愚かにも私はこの世で最も大切な人の命を奪い,自分も死のうと思った事さえありました。それでも貴方が見せてくれた今日の日の夢が心の何処かで私を元気づけ、支えてくれました。」
「それも、貴方が私のフェルディナンに情けをかけてくれたからですよ。」
「貴方のフェルディナン?」
修道僧の指差す方行に目を向けると、手入れの届いた庭園の中で大きな枝角に覆われた頭を誇り高く掲げた白い牡鹿が佇み、黒い瞳でこちらを見ていた。
「白い鹿!!」
静かに頷くと聖エイダンは庭園に続く階段を下り白い鹿のもとへ歩いて行った。
「ごきげんよう,アンドレ。奥様とお幸せになって下さい。」

それだけ言うと凍り付いたように立ち尽くすアンドレを一人残して白い大鹿と老人は庭園の奥に消えて行った。

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Missy

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