白い鹿  (3)

気がつくとそこは大理石の大広間だった。
「ここは一体何処だ?」
あたりを見回したアンドレが鏡張りの壁に映った自分の姿を見て息を飲んだ。そこには貴族の貴公子の様に美しい礼服に身を包んだ自分がいた。きちんと整えられた長い黒髪は青い絹のリボンで束ねられ、同じ色の豪華なベルベットの上着は金の刺繍で縁取られていた。ルビーのブローチで留められているバッテンバーグレースのクラバットは金色のゴブラン織のジレの上にふんわりと揺れている。すると何処からかゆったりとしたメヌエットが流れてきて螺旋階段の上に人影が現れた。
「オスカル?」
ゆっくりと階段を下りて来たのは恋して止まないオスカルであった。金色の髪を緩やかに結い上げ純白の絹に真珠がちりばめられた美しいローブに身を包んだオスカルは優しく微笑みながら階段を下りてくる。思わず差し伸べた手に彼女はか細い手を預けると何も言わずに二人は踊り出した。滑る様に優雅に舞う二人はいつの間にかバルコニーに立っていた。火照った体に夜風が心地よい。月の光だけに照らされてアンドレの腕の中で微笑む最愛の人は余りにも美しすぎて何故か涙が止まらない。その涙をオスカルの柔らかな唇が吸い取った。いつもの薔薇の甘い香りが間違いなくこの腕の中にあった。とうとう我慢出来ずにその唇を吸い、舌を絡めるとオスカルもそれに応えてくれた。
「オスカル…愛しているよ」
何度も繰り返し囁きながらか細い体を抱き締める。
「私もだ…アンドレ。愛している…」
その声は間違いなくオスカルの声だった…

************

アンドレは肩を揺すぶられて目を覚ました。エイダンが申し訳なさそうに言った。
「余り良く眠っていらしたので起こしたくは無かったのですが雨が降りそうなので私はもう教会に戻ります。あなたは連れの方を待たれるのですか?」 
アンドレが頷くと
「それでは私は参りますが,教会はすぐそこなのでお連れの方がいらしたらお寄り下さい。何か暖かい物でも用意しましょう。」
アンドレは礼を言って頭を下げた。すると言い忘れていた様にエイダンが尋ねた。 
「何か素晴らしい夢でも見ていらしたのですか?あなたの顔がとても幸せそうでした。」 
アンドレが悲しげに応えた。
「確かに素晴らしい夢でした。でも所詮夢です。叶う事は無いでしょう。」
むしろ夢から覚めた後がなおさら辛いだけだと思った。
「そのような事は有りません。あなたの夢は必ず叶います。今は辛抱強く待つ事です。」
エイダンが余りにも自信に満ちた口調だったのでアンドレは驚いたがもう一度礼を言ってエイダンが歩き去るのを見送っていた。気のせいだろうか?その時乾いた唇を舐めるとほのかにオスカルの香りがしたようだった。

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Missy

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