牧羊犬(2)

「痛いっ!」
暖炉の前の揺り椅子で子供の肌着を縫っていたオスカルが叫んだ。
「大丈夫か?」
台所からアンドレの心配そうな声が聞こえる。
「ああ,大丈夫だ。針で指を刺した。こういった手仕事は私には向かん!」  
よく見ると小さな肌着の縫い目は余り真っ直ぐでは無いし何度もやり直した所は布が少し汚れている。オスカルは縫いかけの肌着をテーブルの上に置いて溜め息をついた。 
「だいたい私は女だというのに女らしい事は何一つ出来ない!」 
アンドレがオスカル を後ろから包む様に抱きしめた。 
「気にするなオスカル。お前の女らしさは俺が一番良く知っている。それより気分はどうだ?」  
少しだけ大きくなり始めたオスカルのお腹に彼の大きな 掌を優しく当ててアンドレが訪ねた。
「ああ順調だ。もう吐き気も無いし咳も出ない。」  
アンドレの執拗な健康管理のおかげでオスカルの顔色は良く咳血ももう何ヶ月も無い。パリを離れ,きれいな水と空気の中での生活が効果を現したのだろう。 
「これは俺がやるからお前はスゼットの散歩を頼む。」  
白い牧羊犬のスゼットはここ数ヶ月の内に倍の大きさになった。毎日の様にアンドレが罠で捕まえたウサギや野ネズミ、そして小川で取った魚を食べさせたおかげですくすくと育っていた。2人で少しずつ 伏せ, 待て, 来い などを教えて未だ子犬なりにその賢さを見せてくれる。今までは垂れ下がっていた耳もピンと立ち上がり,未だ小さいながらもあの日見た母犬にそっくりになってきた。オスカルが立ち上がると嬉しそうに彼女の足下に走ってくる。
「よしスゼット、散歩に行こう。」  
オスカルがスゼットと外に出るとアンドレは作りかけの肌着に触れてみた。可哀想に大貴族のお嬢様が俺と一緒になった為にこんな事もしなければいけないなんて。もともと手先の器用なアンドレは手際よく肌着を縫い上げていった。

暫くしてオスカルがスゼットと戻ってくる頃には2枚目の小さな肌着が出来上がるところだった。それを手に取ってみたオスカルは涙ぐんだ。 
「お前は何だって上手だ。それに比べて私は何一つ出来ない。お前を喜ばせてやる事もできない...」  
アンドレはオスカルの頬に口づけを落とし、こぼれる涙を優しく吸い取った。 
「そんな事は無い。お前がいてくれるだけで俺は幸せだ。それに今お前はお前にしか出来ない素晴らしい事をしているじゃないか。」   
愛おしそうにオスカルの黄金色の髪を指で透きながら囁いた。  
「私しか出来ない事?」  
「そうだ。お前の中には俺たちの愛の結晶が息づいている。こんな素晴らしい事はないだろ?」  
オスカルの蒼い瞳に幸せそうな輝きが戻った。 
「だからお前はこの子供の事だけを考えていてくれ。それに...」 
 
「それに何だ??」  
オスカルが不思議そうな顔をアンドレの方に向けた。
「お前は何時でもおれを喜ばせてくれるじゃないか...」  
アンドレが悪戯っけたっぷりに微笑むとオスカルの体がふわっと浮いた。 アンドレが彼女を横抱きにして寝室へと向かう。オスカルは耳たぶまで赤くしながらその細い両腕をアンドレの首に巻き付けて彼の逞しい胸に体をあずけた。その仕草が何とも愛らしいとアンドレは思うのだった。 2人の後を追って寝室の方に走ってきたスゼットの前で扉は閉まりそのまま長い事閉ざされたままであった....

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Missy

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