花と蝶 (4)

オスカルは干し草の俵に寄り掛かって座るアンドレの胸の中で目が覚めた。朦朧とした優しい目覚めの中で体を少し動かすとオスカルの唇にアンドレの喉が微かに触れた。ほんの一瞬ではあったがオスカルの唇に残った彼の皮膚の感触は呼吸が止まる程甘く快かった。オスカルは暫く目を伏せてじっとしていた。このままアンドレの香りに包まれていたかったから。 しかし我慢すればする程オスカルの唇はもう少しだけアンドレの皮膚の感触が欲しくなった。もう一度体を動かしてアンドレの喉に唇で触れてみる。おっと、少しやりすぎた。 
「オスカル、起きたのか?」 
「ああ、お前一晩中私を暖めてくれたのか?」 
「いいや、少しの間あいつの世話をしていた。」 
二人の目の前には未だ足下のしっかりしない灰色の子馬が母親の隣に佇んでいた。 
「おお!もう産まれたのか?何で起こしてくれなかったんだ?」 
「お前があんまり良く寝ていたから…疲れがたまっていたんだろう?」 
確かに此処数日あまりよく眠っていなかった。無意識のうちにアンドレを誘うヴィルジニーを想像してしまったから。 
「さて今日の予定は?」 
「パリに用事がある。馬車を用意してくれるか?」 
「よし、わかった。」 
「できるだけ質素なのを頼むぞ。」 
「もちろんだ。」  
オスカルは身支度をする為に屋敷へと戻って行った。自分の部屋に戻るとそっと舌で唇をなぞる。微かに唇に残ったアンドレの皮膚の味をもう一度確かめたくて…

*********

パリへいく馬車の中でアンドレは少し機嫌が悪かった。
「どうしたアンドレ? お前何を怒っている?」 
「オスカル、お前何で嘘をついた?」 
「な…何を突然?」  
「おまえ子馬を見に来たんじゃないだろう。」 
「そ…それは…」 
「厩の窓の下に飼葉桶が引きずられた後が有った。」 
「それが私だと言うのか!」  
オスカルはとぼけようとした。 
「窓の下はお前のブーツの足跡だらけだった!」 
オスカルはそれ以上何も言えず俯いた。 
「おまえ見てたんだろう、おれとヴィルジニー。」 
「ああ…」 
「そうだろうと思った。何故始めからそう言わなかったんだ?…いいや、俺には解っている。」 
「えっ!!!」  
オスカルは狼狽した。アンドレは私の気持に気がついてしまったんだ。私が嫉妬のあまり覗き見までしてしまったと言う事を!!! オスカルは覚悟を決めた。こうなったら何もかもアンドレに告白してしまおう。その方がどんなにか楽になることか… 
「お前、俺が嫁入り前の若い娘をたぶらかしたりしない様に見張っていたんだろ〜!」  
「お前の言う通り私は…… えっ??今何と言った?」 
「俺を見損なうな。いくら向こうから誘われたって若い娘の純真な心を利用する用な事を俺がする訳無いだろう!」 
あんまりの見当違いにオスカルは全く言葉が出てこない。
「図星だったようだな!」 
アンドレは得意そうだ。 
「ああ。お前の言う通りだ。お前を疑って済まなかった。」 

オスカルはそっと安堵の溜め息を付いた。

***********

降誕祭の休暇が終わる前日にヴィルジニーの家から使いが来た。その時アンドレとオスカルは初めてヴィルジニーが裕福な商家の一人娘だと知った。 
「誠に申し訳有りませんがお嬢様は暇を取らせて頂きます。おかげ様で行儀も一通り身に付けさせて頂きましたので嫁ぐまでの残りの日々を家族と共に過ごしたいとおっしゃって…」  
彼女の身の回りの物を手際よく馬車につみこんでいく。 
「どうもお世話になりました。お嬢様は改めてご挨拶に伺います。あ、それと…この手紙をムッシュウ・グランディエへ…」

二人は暖炉の前の長椅子に腰掛けてヴィルジニーの手紙を読んだ。

 


「親愛なるアンドレ、

貴方には本当に感謝しています。貴方の言う通りでした。私の婚約者に会ったのです。その人はとても優しくて誠実な人で私の事をとても大切にしてくれると思います。顔はあなた程ハンサムじゃないにしろ悪くは有りません。(むしろ私の好みです。)この人なら上手くやって行けそうです。こんな馬鹿な娘を大切にしてくれてありがとう。私の事をたまには思い出してね。貴方は私の初恋の人です。貴方の事を一生忘れません。あなたの幸せを祈っています。

ヴィルジニー

P.S.オスカル様に伝えて下さい。 私が間違っていました。この世には一輪の花だけに蜜を求める蝶もいると…」 
 



「花?蜜?蝶?これは一体何の事だ?」 
アンドレが首を傾げた。 
「気にするな…それは女の秘密だ!」 

オスカルはアンドレの頬に蝶がとまる様にそっと口づけして微笑んだ。


 

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