Aurora Borealis

「アンドレ・グランディエを愛しているのですか?」 
ジェローデルの言葉が頭から離れない。 オスカルは戸惑っていた。フェルゼンへの思いは愛だったのかもしれない。でも今この心を疼かせているのは何か別の思いだった。 この頃無性にアンドレが気になって仕方がない自分がもどかしい。

オスカルはそっと目を上げて隣の机で書類を目にしているアンドレを盗み見た。オスカルが見慣れていた、人なつこく笑うあどけない幼なじみの少年はいつの間にかもういない。 そこに居るのは、彼女一人を見つめ愛していると言う逞しい一人の男だった。オスカルは無意識のうちにアンドレをまじまじと見つめていた。  端正な顔立ちがつややかな黒髪に縁取られ, 輝ける青年神アポロの像を思わせる。 良く通った鼻筋と今はもう一つしか無い闇の色の瞳はいつも穏やかだ。 あの夜、かいま見た怖い程激しい情熱は何処に隠されているのだろうか? そしてあの熱っぽく弾力の有る唇…オスカルは今すぐにでもあの広い胸に飛び込んであの唇の感触を確かめたい 衝動にかられた。 知らぬ間にオスカルの心臓は鼓動を早め顔が赤らんでいく 。 その時ふと顔を上げたアンドレと目線が有ってしまった。 
「どうした、オスカル?」  
アンドレは半分愛おしそうに、半分不思議そうに尋ねた。
「な…なんでもない!」  
まるでアンドレに心の中を覗かれた様な気がしてオスカルが狼狽した。
  
「どうだ、そろそろ支度しよう。」 
「えっ?」 
「何だ、忘れてたのか? 今日はアントワネット様に謁見する予定だろう。」 
「ああ、そうだった。」 
アンドレとオスカルが暴徒に襲われたと聞き王妃は二人を心配していたのだ。 着替えと馬車の用意をする為にアンドレが司令官室の扉を閉めて出て行ったのを確認してからオスカルは大きく溜め息をして軍服の襟を緩めた。

***********

宮殿に着いたオスカルは自分が今まで どれだけ無頓着であったか気がついた。もの静かで地味だと思っていたアンドレはなかなか目立つ存在であったのだ。長身で均整の取れたアンドレの優雅な物腰はどんな貴族の男に比べても引けは取らない。きらびやかに着飾った貴族の間に素朴なお仕着せはかえってアンドレ自身の魅力を引き立てている。現にアンドレは宮廷の女性達から熱い眼差しを注がれていた。 その中の何人かは大胆にもアンドレの耳に唇をつける程接近して何か妖しげに囁いたが、その度にアンドレは上手く躱し て、その代わりに完璧な微笑みで女性の手を取り口づけする。傲慢な貴婦人達の自尊心を傷つけない様に躱すのはなかなかの技が必要だ。それをアンドレはいとも簡単そうにやってのけてしまう。 
「おまえいつの間にそんなに女性の扱いが上手くなったんだ?」 
「なにを馬鹿な事言っている? おまえと一緒に宮廷に上がる様になってもう20年近くなる。最も俺も年だな。この頃は俺にかまう女性も大分減ったぞ。」 
屈託なく笑うアンドレは昔と変わらず悪戯な目をしている。 
「じゃ俺は此処で待っている…」  
アンドレはいつもの様に王妃の広間に続く扉の外で立ち止まった。しかしオスカルは咄嗟に口走ってしまった。 「アンドレ、今日はおまえも一緒に来てくれ。」  
アンドレが目を見張った。 
「オスカル?」
オスカルが少し口実めいた返事をした。
「な〜に、アントワネット様がお前の事も気にかけてくださった。おまえもお礼をしたいだろう?」 
「ああ…?」  
アンドレはオスカルの今までと違う指図に微かに躊躇ったがオスカルに従った。 オスカル自身も何故アンドレを王妃との謁見に引っ張りだしてしまったのか解らない。 ただアンドレが扉の外に佇みオスカルの帰りを待つ間、彼の周りにまとわりつこうとする女達の事を考えると居ても立っても居られなかった。  

その時心の中にちらちらと広がる青白いオーロラの様な思いが嫉妬だと言う事をオスカルは未だ知る由がなかった。



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麗しのオスカル

大好きなくだりの原作のすき間話。キャーと読ませて頂きドキドキしていました。続きをまた楽しみにしております。某二次創作でオスカル様とアンドレの埋葬シーンを読み、イラストにしてみたら悲しくて悲しくってちょっと立ち直れなくなっていた二次創作サイト巡り。オスカルとアンドレの二人のお話、何回読んでも苦しいほどに大好きです。すてきなお話を楽しみにしています

Re: 麗しのオスカル

> 大好きなくだりの原作のすき間話。キャーと読ませて頂きドキドキしていました。続きをまた楽しみにしております。某二次創作でオスカル様とアンドレの埋葬シーンを読み、イラストにしてみたら悲しくて悲しくってちょっと立ち直れなくなっていた二次創作サイト巡り。オスカルとアンドレの二人のお話、何回読んでも苦しいほどに大好きです。すてきなお話を楽しみにしています

えびすけ様、
優しいお言葉どうも有り難うございます。私も二人の死は悲しくて書けません。その為私の妄想はハッピーな二人の物が多いです。いくつか又結ばれる前の二人のストーリーを書きましたので又遊びにきて下さい!!!
Missy
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はじめまして!Missy です。日本語はまだまだ未熟ですが,ここはそんな私の妄想で暴走している AO主義のベルばら二次創作サイトです。
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