Change of Command/ Last Roll Call

Change of Command/ Last Roll Call   Mid August 1789

軍服を着るオスカルの身支度を手伝いながらアンドレが言った。
「久しぶりだなおまえの軍服姿。」  
「多分これが見納めだぞ。しっかり見ておけ。」   
「おまえの姿なら何時だってしっかり見ているさ。」  
バステイーユ襲撃後,労咳の治療の為病院で一月も寝たきりだったオスカルは久しぶりの外出に機嫌を良くしていた。 
「具合はどうだ?」 
「ああ,良好だ。この頃食欲も有る。」  
「そうだな,今日は顔色も良いぞ。 でも無理はするなよ。」 
「私の心配よりもおまえはどうだ? 傷は痛むか?」 
「腕の方はもう大丈夫だ。背中の方は未だ少し痛むがおまえの従僕兼護衛として十分復帰できる。」  
「おまえはもう私の従僕兼護衛ではない。 私の夫だ!」   
「…そっちの方も復帰できるぞ!ああ,なんなら今此処で証明しようか?」 
「そ…そういう意味で言ったのではない!」 
オスカルの顔がみるみる赤くなった。 
用意はできたか? いくぞ!」  
照れ隠しにオスカルがわざと邪険に言った。 
「ああ。」  
アンドレは全く気に留める事無く油布でサーベルをもう一度拭いてからオスカルに手渡した。

*******

「隊長!」 
アランが走ってくる。 オテル・ド・ヴィルの広場では衞兵隊が整列していた。 
「用意は良いか?」 
「はい、いつでも。」 

アランとオスカルが衛兵達の正面に立った。 オスカルが高ぶる感情を抑えながら語った。 
「兵士諸君! 今までどうも有り難う。 君達の誠意と忠誠を私は一生忘れない。私はこの体を治して一刻も早く隊長として復活できる事を望んでいる。その日が来るまでアラン・ド・ソワソンを衛兵隊隊長に任命する。 皆もアランの実力はバステイーユで知っての通りだ。 アランなら必ず私の意思を次いで祖国の為に働いてくれると確信している。君達もアランを信じて彼の力になってやってくれたまえ。」 
オスカルはアランに彼女のサーベルを手渡し、
「アラン、頼むぞ。」
と小声で言った。アランがサーベルを天に向けて掲げると衞兵隊が一斉に拍手をして叫んだ。 
「新隊長ばんざい!」

新隊長はオスカルに一礼すると大声で号令をかけた。 
「衞兵隊、気をつけ!」
それを合図にユラン伍長がゆっくりと馬を引いて来る。 馬の鞍には誰も乗っていない。その鐙には後ろ向きに置かれた衛兵隊のブーツがある。無人の馬と逆向きのブーツはもう馬に乗る事の無い 同士達の象徴だ。 
「敬礼!」 
馬が整列の前を通った時衞兵隊が背負っていたマスケット銃を持ち替えて体の正面に掲げた。沢山の民衆が知らないうちに集まって来て静かにこの厳粛な儀式を見つめている。馬が通り過ぎるのを見とどけてアランが合図をすると衞兵隊がもう一度気をつけの姿勢に戻り銃を肩にもどした。 

「最後の点呼始め!」
アランが衞兵隊員の名前を一人一人呼ぶ。 呼ばれた者は 
「はい、隊長!」
と返事をする。 出席者全員の名が呼ばれた後に今はもういない同士達の名前がよばれた。
「アルマン!」
皆の顔が曇った。 
「フランソワ・アルマン!」 
衞兵隊の中からすすり泣く声が聞こえて来た。 
「フランス衛兵フランソワ・アルマン!」
3度目にフランソワが呼ばれた時、ユラン伍長が 
「隊長、フランス衛兵フランソワ・アルマンは今、主のもとに仕えております!」  
「了解!」 

「シニエ!」 
「ジャン・シニエ!」
「フランス衛兵ジャン・シニエ!」 
「隊長、フランス衛兵ジャン・シニエは今、主のもとに仕えております!」  
「了解!」
 
………こうしてテュイルリー宮広場で最後を迎えた四人とバステイーユの犠牲者21名の点呼が終わるまでには衞兵隊も民衆も皆涙無しでいられなかった。
点呼が終わると静かだが力強い英語でアランが語った。
 
“From this day to the ending of the world….we in it shall be remembered….we band
of brothers; For he today that sheds his blood with me shall be my brother” *  
(今日の日から、そしてこの世の終わりまで 覚えていよう。我らは兄弟だ。共にこの血を流したのだから…)

アランの号令に7人の兵士が並んで銃を構え1人ずつ、3回銃を空に向けて撃った。体を突き抜ける様な銃声が沈黙の広場で鳴り響いた。

アランの次の号令で皆くるりと踵を返すと 後ろに立ち並ぶ25丁のマスケット銃が目に入った。 間をあけて銃口を下にして地面に差し込まれた銃にはその台尻に衞兵隊の帽子が駆けてある。そして25人の子供達が赤白青の3色リボンを折って作られたコカルデ〜英雄のしるし〜を黒い毛皮の帽子に留めた。

アンドレは涙をぽろぽろ流しているその中の一人の男の子に気がついた。目の前のバトルクロスを見つめながらコカルデをただ握りしめているその少年に見覚えが有った。
「そうだ。面会日に兵舎に来ていた。フランソワの弟だ!」 
痩せてそばかす顔の少年はフランソワの面影がある。この少年に初めての靴を履かせる為にフランソワは剣を売ったと言う。アンドレはその少年の側に膝を付きその子の肩にそっと手を置いた。 
「君の兄貴はとっても勇敢だったよ。とても優しい良い奴だった。」 
「うん。」 
こらえきれなくなった少年はアンドレにすがりついて泣いた。  
「元気を出して頑張るんだぞ。君の兄貴は何時だって君を天国で見守っているんだ。」 
彼の胸で泣きじゃくる少年の背中を優しくさすりながらアンドレは言った。

民衆と衛兵の歌う賛美歌がいつまでも夏の空にこだましていた。
“Kyrie Eleison、Christe Eleison、Kyrie Eleison……”
主よ 憐れみたまえ、キリスト 憐れみたまえ、主よ 憐れみたまえ……








あとがき:フランソワとジャン、原作では一コマで撃たれてその後生息不明……どうしたんだろ〜なんてよく思ってました。大辞典によるとバステイーユで死亡だそうですが、あれはどう見てもテュイルリー宮広場じゃないかな? 私の大好きなキャラなので彼らの為にこのSSを書きました!

*アランの英語の詩はシェイクスピアのヘンリー5世からです。

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