~ Into the Fire we go (おまけ)〜  Early August 1789

~ Into the Fire we go (おまけ)〜 Early August 1789


アンドレとアランは並んで歩いていた。 
「なんだ、お前達お揃いか?」 
冷やかしの言葉が衞兵隊の仲間から飛びかう。確かに左腕を共に吊って並んで歩く二人はまるで双子だ。 アンドレは自慢げに言った。
「オスカルを守るために受けた傷は俺にとっては勲章だ。」 
「ふん、お熱いこって!」 
アンドレが微笑んだ。
「おまえだってそうだろう?」
アランが静かに眼をふせた。
「ああ。」  

あの時、覆いかぶさって庇ったあの人の淡い薔薇の香をあの人に気づかれぬ様に胸一杯に吸い込んだ。 自分の体の下で息づくあの人の体の柔らかさと共に生涯決して忘れない様に。
 
「それ位は許せよ、なあアンドレ。」 
アランはそっと囁いた。

~ Into the Fire we go (3)〜    7.14.1789 PM

~ Into the Fire we go (3)〜    7.14.1789 PM


アランの指揮はほぼ完璧に見えた。 
「それは私達が似た者同士だからか?」 
以前アンドレに言われた事が有る。 
「お前とアランは性格がそっくりなんだ。荒っぽいくせに実は優しくて弱い者を見ると助けずにはいられない。」
衛兵達を要所要所に配置させ民衆を庇いながら焦らずに攻撃をかける。大砲を上手く操り国王軍の守りを揺るがせていく。
「確かに私も全く同じ方法で攻撃したに違いない…」
オスカルは自分の出番を待つ子供の様に少し羨ましげに戦いの進展を見つめていた。

しかし始めの動揺が治まってくるとやはり本職の軍人である。国王兵は民衆を完全無視して青い上着の衞兵隊だけを狙撃しだした。いくら平民達が銃を持っても慣れない武器はまるで役に立たない。

70ヤードの射程距離より後方で歯がゆく見守っているオスカルにも国王軍の作戦が手に取るように解った。
「まずい!この分では数は勝るとも戦力は劣ってしまう!」 
伝令係のピエールも不安そうにオスカルを見つめて彼女の指示を待っていた。  
「ピエール、上着を脱げ。帽子もだ!」 
近くにいた平民の上着を脱がすとピエールに着せた。 
「いいか、アランに伝えるのだ。軍服を脱ぎ、どれでも良いから民衆の上着を着るんだ。解ったな!」 
オスカルもピエールの後を追う様に走り出したが近くで見ていた白髪の上品そうな男に止められた。 
「あの,もし…こんな物で宜しければ使って下さい。 あなた様のお召しの将校様の軍服は衞兵隊の物以上の的となるでしょう。」 
古びていたが清潔そうな上着と黒いトリコーヌの帽子を差し出した。 
「ありがとう。遠慮なく使わせて頂きます。」 
自分の軍服の上から少し大きめの上着を着込み,その輝く黄金の髪を無造作に丸めてトリコーネの中に押し込んだ。そしてオスカルは民衆に紛れて最前部に向かった。

「アラン!」 
アランはその眼を疑った。ぶかぶかの上着を着て其処に立つオスカルの青い瞳がトリコーネの下で燃えている。 「隊長!あんた一体何をやってるんですかっ! 俺に任せるって言ったでしょう!」
「ああ、たしかに。私はただの助っ人だ!」 
「す…助っ人?」 
呆れたアランを後にオスカルは民衆の方に向き直った。  
「良いか,衞兵隊諸君!上着と帽子を脱ぎたまえ!誰のでもよい。 他の上着を着るのだ。軍服を着ていたら命は無いと思え!」
アランが上着を脱ぎ捨てた。それにつられる様に衛兵達は軍服を脱ぎ捨て平民達の差し出す上着に着替えた。たちまち波に飲まれる様に失われた青い標的。狙いを失った国王軍の射撃が躊躇した。

丁度その時真夏の太陽が加勢する様に雲の切れ間から顔を出した。それを合図にオスカルがトリコーネとすり切れた上着を脱ぎすてた。さらさらと帽子から流れ落ち再び自由を得た黄金色に輝く髪はまるで生き物の様に風に翻った。今まで隠されていたフランス衞兵隊隊長の青い軍服の腰で髪の毛と同色のサッシュが靡く。その美しさは隊長に見慣れている衞兵隊員まで見とれる程だ。

「見ろ! 俺たちには勝利の女神が付いているんだ!」
誰かが叫ぶと,バステイーユ中の人々が沸き上がった。オスカルは庶民の一人から大きなトリコロールの旗をつかみ取り,大きく両手で翻した。 庶民と衛兵達の歓声がバステイーユの城壁内で響き渡る。 
「勇気あるシトワイヤンよ!跳ね橋の縄を切るのだ!衞兵隊,援護射撃だ。彼らに指一本触れさせるな!」
 
興奮と熱気に煽られて民衆は一体となって跳ね橋へ蠢く。今や降り注ぐ銃弾も恐れてはいなかった。

「撃て!あの将校を撃て!」 
「駄目だ!逆光だ!狙いが定まらん!」
ようやく国王軍がオスカル目掛けて引き金を引いた。一つ目の弾はオスカルの持つトリコロールの旗ざおを真二つに折りその中にめり込んだ。もう一つの弾は咄嗟にオスカルを押し倒したアランの左腕に。後はオスカルをすっぽり包む様に組み伏せたアランの頭上を素通りして行った。我に返った衞兵隊のマスケット銃がそれに応戦した。

ようやくアランがオスカルの体から離れた。 
「隊長、大丈夫ですか?」 
オスカルに手を貸して立ち上がった。 
「私は大丈夫だ。おまえ血が…」 
アランの左腕から血が滴っていた。 
「ただのかすり傷です。 なに、これで……これであなたにお詫びが出来ました。」 
オスカルの脳裏であの雨の朝に三部会の会場でぶつけられた痛い程の情熱を思い出した。
「ああそうだな…」 
オスカルは笑顔で答えた。その時アランが叫んだ。 
「隊長、白旗です!バステイーユが……バステイーユが陥ちました!」 
「おお!」 
フランス万歳の歓声が沸き上がる中でオスカルは白くはためく頭上の旗を万感の思いで見つめていた。
「後は頼んだぞ、指揮官殿!」 
「解りました。早く旦那の所へ行ってやって下さい。ピエール、隊長を護衛しろ!」 
お前もその腕を見てもらえ。良いな?」 

ピエールとオスカルは勝利に酔うバステイーユを後にした。

*********

アンドレは未だ眠っていた。 オスカルは 寝台の横に座りそっとアンドレの右手を握りその唇に口づけした。
「言っただろう?私は必ず帰ってくると…おまえが目を覚ました時一番最初に見るのは私の顔だ。」  
その時アンドレの唇がゆっくりと動いた。
「約束だ…これからもずっと…」 
「アンドレ!!!」 
オスカルがアンドレの胸に顔を埋めて 泣いた。アンドレの胸に涙がしみ込み快い暖かみが広がる。
「オスカル…もう離さない。」 
オスカルは何度も頷いた。オスカルはアンドレに抱かれて満ち足りた眠りについた。これからは二人で朝を迎える事が出来る喜びを胸一杯に感じながら…

~ Into the Fire we go (2)〜     7.14.1789

~ Into the Fire we go (2)〜     7.14.1789 

オスカルが眼を覚ました時未だアンドレの右手を握っている事に気がついた。窓の外から 差し込む日の光はもうずいぶんと高くなっている。アンドレは未だ眠ったままだが気の性か呼吸が幾分楽になった様に見える。オスカルがそっとアンドレの髪を指で透いた。
「私を許してくれるか…又私の為におまえを傷つけてしまった…」 
オスカルの蒼い瞳から又涙が零れ落ちた。昨日あれだけ泣いたのに未だ涙が残っていたのが自分でも不思議だった。オスカルは何もかも忘れてただこうしてアンドレの側にいたかった。それでもやっとの思いで立ち上がった。アンドレの頬に、唇に,そして今は閉じている両目に優しく口づけすると 
「おまえなら私の帰りを待っていてくれるだろ?神に賭けて誓うぞ。 必ず生きておまえのもとに…だからおまえも絶対に生きろ。いいな?」 
手の甲で涙を振り払い軍服の襟を整えると愛してやまぬアンドレを後にした。

*******

オスカルが衛兵隊の仮の駐屯所に付いた頃にはもう昼過ぎていた。 
「隊長!」
目敏くオスカルを見つけたユラン伍長は先ずは状況報告する 。 
「今の所は怪我人15名と死亡者4名…」 
ユラン伍長が怪我人の名前を一人ずつ読み上げアンドレ・グランディエの名前が呼ばれた時オスカルの肩がビクンと強張り動揺を隠せなかった。
「死亡者は?」 
「ジャン・シニエ、フランソワ・アルマン、ドゥニ・ゴーティエ、ミシェル・ラ・バール以上4名。」 
オスカルは俯き眼を伏せた。皆彼女のよく知っている奴らばかりだ。オスカルは込み上げてくる悲しみを必死にこらえた。
「そう…か。ご苦労だった」

「今一番問題なのは火薬と銃弾です。今朝方民衆が 廃兵院から山ほど大砲やマスケット銃を奪って来たのは良いのですがそこには火薬と銃弾がありませんでした。火薬と銃弾のしこたま有る所と言えば…」  
「バスティーユか…」 
自由と熱意に酔った民衆はもう止めようになかった。 
「わかった。 集められるだけ銃弾を集めるんだ。用意が整い次第、整列だ!」

ユラン伍長がオスカルを呼びに来たのはそれから大分経っていた。
「釘や鉛の道具まで溶かして弾を作りましたがそれでも数が足りません…」 
「それではなおさらバスティーユが必要だな!」 
オスカルの蒼い瞳が大胆不敵に燃えた。

整列した衛兵隊の前に進むとオスカルは静かに語った。オスカルの女性にしては低くよく通る声が広場中に響き渡る。

「諸君。私は今日まで君達と共に行動出来た事を誇りに思っている。昨日も言った通り歴史をつくるのは一人の英雄や将軍ではなく君達人民だ。 私が何を言うまでもない。君達にはバスティーユの重要さは解っているはずだ。今はもういない4人の同士達の死を無駄にせぬ為にもバスティーユを執らねばならん!」

「隊長!衞兵隊全員を代表してあなたに頼みが有ります!」 
アランが隊長の前に進み出た。  
「あなたの病の事もご主人の事も皆知っての上でお願いします。私に戦闘指揮を代行させて下さい!」 
衞兵隊員全員が頭を下げた。 
「お願いです!」  
「あなたの様な方は生き残ってこれからの我が国の軍隊を指揮する武官を育てて下さい。斬り込み屋は俺達で十分です! それに後方から指揮をとると言う戦法もあります。現にアメリカの陸軍では元帥は常に後部で指揮すると読みました!」  
「流石に士官学校出だな, アラン。解った。お前に前線指揮をまかす。わたしは70ヤード後方で待機する。1班のラサールとピエールは使いとして私とアランのつなぎを執ってくれたまえ。有り難う諸君。」
衞兵隊が歓声を揚げた。

「衛兵隊、進撃! 目指すはバスティーユだ!!!」 
アランが衛兵隊指揮官として最初の命令を下した。

~ Into the Fire we go (1)〜    7.13.1789  

~ Into the Fire we go (1)~     7.13.1789  

オスカルの率いる衞兵隊が民衆側にねがえったという知らせは山火事の様に瞬く間に広がった。いくら武器を持ったと言え商人や一般市民は戦闘に関してはド素人。数ばかりいてもお互いの邪魔になるばかりで その数は一方的に抹消されていく。フランス衛兵の進撃は戦いの風向きを完全に逆転した。 オスカルの指導の下にできるだけ煙や馬車等を楯に兵士達を配置させ弾を無駄にせぬ様に慎重に照準を合わせる。一般市民は兵士達の邪魔にならぬ様にマスケット銃の弾を込めて兵士に手渡したり大砲の弾を運んだりといった役割を機能的に行った。オスカルは白馬で兵士達の間を駆け回りながら指導し, 労いの言葉をかけて戦闘の勢いを失わせぬ様に気を配っていた。そのすぐ側には付き添う様に黒馬で駆けるアンドレの姿が有った。失いかけた視力を必死に隠しオスカルを守ろうとするアンドレは正にオスカルの光に対する影そのものであった。

国王軍の抵抗も薄れ後一押しと言う所だ。衞兵隊の勝利も決まりかけ今までの緊張が解けて来るのを待っていたかの様にオスカルの胸の病がその姿を現した。硝煙や砂埃の刺激に耐えかねた肺はもう我慢ならぬとばかり血の濁流となって オスカルに襲いかかった。
「オスカル!!!”」 
わずかの隙を見つけた国王軍の照準が馬上で咳血する金髪の司令官に向けられるのとアンドレが反射的に自分の馬からオスカルの馬に飛び移ったのはほぼ同時であった。次の瞬間弾丸を受けて 倒れる白馬からオスカルを抱いたままアンドレが跳び降りた。

「ユラン伍長!」 
アランが叫んだ。
「ああ任せろ!」
ユランがオスカルの代わりに指揮を執った。  アランとピエールが絡み合ったまま石畳に倒れた二人を引きずる様に戦闘後部に移すとアランを残してピエールは医者を呼びに走った。アンドレとアランはオスカルをとりあえず荷馬車の後部に寝かせた。 
「隊長、失礼いたします!」
傷の手当をしようと上着の鈕に手をかけたアランをオスカルが制した。 
「いや…私は大丈夫だ。弾は当たっていない。」 
「だってこの血……」
オスカルの青い上着は血で真っ赤にそまっている。 
「オスカル、何時まで隠すつもりだ。胸の病は根気よく治療すれば克服できぬものでは無い。頼むから医者の治療を受けてくれ。」  
アンドレが嘆願した。 
「おまえ…知っていたのか?」 
「あたりまえだろう。お前の事ならお前自身より良く解っているつもりさ。」 
無言で唇を噛みしめていたオスカルに向かってアランも口を開いた。 
「隊長……あんたはもう出来る限りの事をしてくれた。これからは俺たちに任せてくれないか?なあに、俺だって一応は士官学校出だ。軍事戦略や作戦術ではあんたに退けは取らねえ。」  
「おまえの実力は私が認める。」 
「それに……あんたに何かあったら 『あんたのアンドレ』は生きていませんぜ。」  
オスカルが息をのんだ。確かにそのとおりだ。オスカルは死を恐れてはいなかった。ただアンドレを失う事だけが何よりも怖かった。 永い間自分を愛して見守ってくれたアンドレもその気持ちは同じだろう。暫く黙っていたオスカルは覚悟を決めた。 
「…解った。衞兵隊をおまえにまかす。頼んだぞ。」 
アンドレとアランが同時に安堵の溜め息をついた。そしてそのままアンドレの長身が後ろにゆっくりと傾き崩れ落ちる様に倒れた。 
「アンドレ?」
アランが抱き起こそうとするとアンドレの上着の背中と左腕がぐっしょりと血で濡れている。
「おまえ撃たれていたのか!!」
あわてて上着とシャツを剥ぎ取ると銃創は左腕上部と左背中に有った。アンドレを近くのアパルトマンに運び医者が治療をしている間動揺して泣き叫ぶオスカルをアランとピエールが二人掛かりで宥めた。暫くして医者がオスカル達の前に現れた頃にはテュイルリー宮広場の戦いは終わり勝利を知らせに来たユラン伍長やラサールもそこにいた。

*****

「急所は外れています。ただ血を沢山失っていますので今夜が峠ですな。」 
蒼い瞳から零れ落ちる涙を拭おうともせずオスカルが医者に礼を言うと尋ねた。
「私の…夫に逢わせていただけますか……」 

その言葉に驚いて立ちつくす衛兵達をよそにオスカルは医者と共にアンドレのいる部屋へ向かった。上半身を包帯で包まれたアンドレはいつになく顔色が悪く呼吸するたびに胸が苦しげに起伏する。オスカルは寝台の隣の椅子に腰掛けてアンドレの右手に頬ずりした。そしてアンドレの懐かしい香りに包まれながらそのまま眠りに落ちていった……

Subtle Change

Subtle Change  (JULY 1789)


「なんだか隊長とアンドレの様子がこのごろおかしくないか?」
昼飯の黒パンをかじりながらフランソワが言った。 
「今思えば…」 
ラサールがテーブルに乗り出す様にして声を潜めながら言った。 
「昨日司令官室に書類を届けに行った時二人の様子が変だったんだ。ノックをしてから隊長が声をかけるまでちょっと時間がかかった。中に入るとアンドレと隊長が何食わぬ顔をして各々の机で仕事をしていたけど...隊長の顔がやけに赤くて。まるで何かやましい事でもしていたみたいに。普段と違って俺が話しかけても下を向いたままで答えたし。」  
「ま…まさかア…アンドレとた…隊長が結ばれたんじゃ…?」 
ジャンが興奮ぎみに言った。アンドレが隊長に夢中だという事は衛兵隊の皆が知る事ではあったが、それはアンドレの片思いのはず。まさか大貴族の伯爵令嬢と平民の従僕では身分が違いすぎる。
「そういえばアンドレこの頃すごく機嫌が良いよな…隊長の婚約騒動が有った頃はあんなに落ち込んでたのに。」ピエールがうなずいた。
「あの頃だよ...俺なんかいつもの様にふざけて 隊長の愛人て呼んだだけで殴られた!やってらんね〜!」 「でもあの2人くやしいけどよく似合ってるぜ! 二人とも長身であの美形ときてやがる。」
フランソワが溜め息まじりに嘆く。

それまで黙っていたアランが機嫌悪そうに大声で叫んだ。 
「お前ら何時まで油売ってるんだ!食い終わったらさっさと外へ出ろ。行くぞ!」
そして1班の奴らをひっぱって食堂の外に出た。他の班はもう午後の訓練を始めている。 アンドレが1班の連中を見つけて彼らの方に歩いてくるのが見えた。 
「噂をすれば何とやらだぜ。よ〜し、試してみようぜ!」
フランソワが叫んだ。  
「おいアンドレ!今日はお前一人か?お前の愛人はどこ?」
「何を馬鹿な事行ってるんだ!オスカルならブイエ将軍との会議を終えてもう帰って来る頃だろう。」 
ピエールが
「ほら,怒らないだろ?」
と顔をしかめた。アンドレは訳が分からなく
「何だ, お前達?」
と首を傾げた。

丁度その時オスカルは衛兵隊本部から出て来る所だった。黄金色の髪を左手で掻き上げ,その蒼い瞳が何かを探していた。アランは何も言わず見ていた…その蒼い瞳がアンドレを見つけた時、今までアランが見た事の無い 優しい愛情のあふれた表情をみせたのを。 
「まさか…俺の見間違いだ。」
アランは 小さな声で誰にとも無く呟いた。

********

その夜アランは夜勤のアンドレの代わりを勤めパリの駐屯所の視察へ向かうオスカルに付き添った。この頃のパリの治安はますます悪くなるばかりで衞兵隊の仕事も増える一方であった。オスカルも毎晩帰宅は夜更けである。帰りの馬車の中でオスカルはアランと向かい合って座っていた。
「アラン,非番の日に付合わせてすまなかった。助かったぞ。」
「気にしないで下さい,隊長。非番って言ってもどうせ給料日前で遊ぶ金もないし。隊長も少し休まれたらいかがですか?もう長い事休暇も取ってないでしょう?」
「そうか…じゃあ、お前の言葉に甘えて少し休ませてもらうぞ。」  
よほど疲れていたのだろう。オスカルが眼を瞑るが早く静かな寝息が聞こえて来た。
「隊長…何で女の身でそこまでやらねばならねえんだ。あんたならさっさと結婚して安全な所で何不自由無く暮らせるだろうに。」
アランは アンドレが用意してくれた毛布をひろげてオスカルにかけてやった。その時だ。オスカルの寝言が聞こえてきた。
「…愛している…私のアンドレ…」
アランは 硬直した。頭の中に オスカルの言葉が繰り返し響き渡る。畜生!とうとうあの野郎の思いが叶ったってわけか。

 
******


衞兵隊の本部に戻ったアランはフランソワと組んで警備に当たるアンドレを見つけた。
「アラン!駐屯所の視察はどうだった?」 
「心配するな。問題無しだ。それより俺が夜勤を変わってやるからお前は隊長と一緒に屋敷へ帰れ」
「何だいきなり?」 
「お前の為じゃねえ。お前が居た方が隊長も何かと気が休まるだろう。隊長は疲れきっているぞ。おまえ自分の女ぐらいもっといたわってやれ!」
アンドレは一瞬眼を大きく見開いたが 
「ああ、お前がそうしてくれるなら助かる。ありがとよ!」
アランの肩をポンとたたくと司令官室の方へ走って行った。
「アラン,なんだ今のは?」
「なんでもねえよ!」
たずねたフランソワをアランが怒鳴りつけた。


*******


アンドレに肩を抱かれながらオスカルが微笑んだ。
「よかった…今夜はお前と過ごせないと 諦めていたんだ。お前のいない夜は淋しくて胸が張り裂けそうになる。」「ああ俺もだ。驚いたよ。アランが頼みもしないのに夜勤を変わってくれるなんて。」
「アランが?」 
「ああ…おまえ アランに何といった?」  
「別に何も…私は馬車の中で眠っていたし…そうだ私はおまえの夢を見たぞ…夢の中でさえ私はおまえに愛を囁いていた…」  
「それは光栄だ…我が愛しの女神よ…」 
アンドレはオスカルの耳に熱い吐息で囁いた。
「ず…るいぞ…おまえは知っているんだろう…お前の囁きは蜜よりも甘い。それをやられると私は体の動きがまるで取れなくなる…」  
「それは知らなかった…」 
アンドレは更に甘く,熱く囁いた…… 



アンドレは知っている。小さな頃からオスカルが夢を見ると決まって寝言を言う事を。どうやらオスカルはアランの前で俺への愛を囁いてしまった様だ…

「ま、いいか…」
アンドレは微笑んで腕の中のオスカルを力強く抱き締めた。








Caged Lion

「なんということだ! 革命政府はオーストリアに宣戦布告をしたぞ! これではアントワネット様と国民との溝を深め王家の立場を悪くするばかりだ。」
オスカルは久しぶりに届いたベルナールからの手紙を読みながらアンドレに嘆いた。  
「オーストリアにはプロイセンやフランスの亡命貴族が付いている。我がフランスはこの危機の中に孤立してしまった…」  
オスカルの眼は 青白い炎を燃やしていた。
「夥しい数の帯剣貴族が亡命した今となっては、兵を統率できる指揮官の数が足りないのだ。」 
ベルナールが何を言いたいかは一目瞭然だ。革命政府はオーストリアとの戦いに備えてバスティ-ユで勝利の女神と讃えられたオスカルの武官としての力と名声が喉から手が出る程欲しいのだ。 アンドレには彼女の興奮が声を通して伝わってくる。 
「解っている。おまえの武将の血が騒いでいるんだろう?」 
「馬鹿を言うな、アンドレ…私は1児の母だ。乳飲み子を残して戦には出られん。」
オスカルの返事が幾分寂しそうだった。

アンドレの黒い瞳が曇った。 
「どうしたアンドレ?」 
「覚えているか,おまえが未だ近衞に居た頃だった。コンゴ王国の使者が国王陛下に献上するライオンを宮殿に連れて来たのを...」  
「ああ,覚えている。美しく力強い生き物だったな。燃える様な眼をして人を寄せ付けない威厳があった。」
「おまえの言う通りだ。しかし俺は数年後にあのライオンを見たんだ。宮殿の庭園内に作られた檻に住むライオンはすっかり野生を失っていた。あの眼は光を失いどんよりと遠くを見つめていた。」
「そのライオンと私とどうかかわりがあるのだ?」
「未だ解らないのか? あのライオンはおまえそのものなんだよ。コンゴの草原で鬣を靡かせ駆け抜けるライオンはそれが本来の姿でそれこそ一番美しい。おまえも又おまえの意思が命ずるままに突き進む姿が一番美しいんだ。」
オスカルは何も言わずにただ唇を噛み締めていた。 
「俺は怖いんだよ。何時の日かお前が平凡な日々に耐えきれなくなるのが。あの檻の中のライオンの様におまえの瞳から炎が消えるのを見るくらいなら俺はこの命を失う方が良い!」
二人の間に重苦しい沈黙が訪れた。

その沈黙を破る様に奥の部屋から人の気配がした。 次の瞬間扉が勢い良く開き,小さな金髪の頭が現れた。くるくる動く蒼い瞳がアンドレの姿を見つけると真っ直ぐに彼の方に歩いてくる。
「セシル...もう起きたのかい?」  
「とーさま...おそと!」
「よしよしじゃあ外に行こう。」
セシルの昼寝の後の散歩はアンドレとセシルの日課だった。アンドレは軽くオスカルの金髪に口づけし、  
「じゃ,いってくる。すぐに帰るから。」
  
セシルの小さな手を引いて春風の中を歩いていく。最愛の夫と娘を見送りながらオスカルは深く溜め息をついた。確かにアンドレの言う通りだ。無理はない。幼少の頃から武官として生まれ育ったオスカルである。自分で定めた道ではないと言え他の生き方を知らないのだ。
「私は本当にセシルの母親に成りきれるのか? 私の出来る事は乳を与える事ぐらいだ。 こんな使い物に成らぬ母親などいてもいなくてもよいのではないか?それならいっその事軍隊へ戻り我が国の役に立ちたい...」

オスカルの蒼い瞳から一筋の涙がこぼれ手の甲に落ちた。いつの間にか隣に座っていたスゼットがオスカルの膝に頭を持たせかけて手の甲の涙を舐めた。
「お前は不思議な奴だな。私が悲しい時は必ずそばにいてくれる。」


屋敷の前のなだらかな丘を下りアンドレは果樹園のぶどうの木の根元に腰を下ろした。アンドレの隣でセシルがすみれの花を摘んでいる。 春の日差しが心地よく体を包む。つい先ほどまでのオスカルとの会話の事で頭が一杯のアンドレは注意深く獲物に近づいてくる5組の金色の眼の存在に気がつかなかった。それは5頭の狼だった。その年の冬のフランスアルプスは雪多く、動物の数が減っていた。獲物を求めて山から下りて来た狼が海岸沿いのこの村にまで足を運んでいたのだ。 暫く隠れながら慎重に近づいて来た灰褐色の狼はアンドレが一向に気づかないのを良い事に大胆に距離を縮めて行く。

その時風の向きが変わった。春風が丘を駆け上がり開け放された窓から家中に広がった。その途端,スゼットの全身の毛が逆立ち,のどの奥から低いうなり声が響いて来た。
「スゼットどうした?」 
スゼットのうなり声を聞いたのは初めてだ。止める間もなくスゼットはひらりと窓を飛び越えた。成長したスゼットはどの窓でも軽々と飛び越せる程大きくなっていた。 オスカルは窓に駆け寄った。 

オスカルは窓の外の光景を見て凍り付いた。 5頭の狼がアンドレとセシルの周りに弧を描く様に様子を伺っている。その狼の群れを目指して低く唸りながら全速力で駆けて行くスゼットを見て狼は正体を現した。荒々しい唸り声で牙をむき出しアンドレとセシルを囲む。 突然姿を露にした危険にアンドレは咄嗟にセシルを片腕で抱き上げ もう一つの手で葡萄の枝を折り力任せに振り回した。狼はまるでアンドレをもてあそぶかの様に一匹ずつ入れ替わりに攻撃をかける。獲物が疲れて来るのを待っているかのように。 とその時白い塊がアンドレと狼の間に躍り出た。スゼットは先頭の狼の首に食らいつき2匹は縺れ合いながら草の上を転がる。眩しい白と灰褐色が互い違いに上下の位置を変えた。

「おおアンドレ!」 
オスカルは震える手でシャルルヴィルのマスケット銃を掴むとものすごい早さで弾薬をつめた。
「落ち着くんだ. . .」
一度深く呼吸してアンドレに一番近い狼に照準を合わせる。オスカルの手の震えは自然に止まっていた。息を止めたままゆっくりと引き金を引く。 銃声が春の静かな丘に響き渡った。オスカルの正確な狙いは見事に狼の胸部を打ち抜き狼の体が力なく地面に崩れ落ちた。 オスカルは素早く㮶を扱って次の弾を込めた。しかし狼はもう攻撃を仕掛けてはいない。オスカルがしとめたのは群れを統一していた雄だったのだ。頭を無くした群れは当惑して戦闘心を無くし逃げ出した。スゼットに組み伏せられていた狼もようやくスゼットを振りほどいて群れの後を追った。スゼットの白い毛が血にそまっている。マスケット銃を握りしめたままオスカルは丘を駆け下りた。

「アンドレ!大丈夫か?セシルは?」
「ああ大丈夫だ。ありがとう。助かったよ。」 
「手を貸してくれ。スゼットが...」
全てが新しい遊びだとでも思って笑っているセシルをオスカルに預けスゼットの未だ荒々しい呼吸する音の方に向かった。スゼットは座ったまま傷を舐めている。アンドレがそっと抱き上げて 屋敷に運び血を洗い流してやると深いかみ傷が肩と前足に痛々しい。スゼットに 包帯を巻きながらオスカルが言った。
「ありがとうスゼット。又おまえに助けられたな...」
スゼットの頭に頬を寄せると嬉しそうにオスカルの顔をなめた。

********

その夜セシルを寝かしつけたアンドレが窓辺に佇むオスカルの肩を抱いた。 
「今夜は星が綺麗だ。おまえに見せてあげたい。」 
「俺にはもっともっと美しい星がここにある。」  
オスカルの肩にかかる黄金色の髪を優しく払いのけ、そのか細い首筋と肩に口づけの雨を降らせた。 オスカルは暫く眼を閉じて体中を駆け抜ける甘い衝撃に身を委ねていたが思いきった様にアンドレに囁いた。
「私はもう軍隊にはもどらぬ。今日解ったんだ。私のいる場所は此処しか無い。この世で一番大切なおまえとセシルのいる此処しか....」
アンドレに向き直りその首に両腕を回して口づけをねだった。  
「心配するな。私の瞳の炎は消えん。いつも物静かなスゼットでさえ愛する者の為ならその瞳に炎を燃やす。おまえが私の側にいる限りこの瞳は燃え続けるぞ。」

アンドレは確かに蒼く力強く燃える 二つの美しい星が彼の両腕の中で輝いているのを見た様な気がした。  

Sainte Cécile (聖セシル)

このストーリーは優しい励ましの言葉をくださったクオーレ様に捧げます... クオーレ様どうもありがとうございました!

Sainte Cécile (聖セシル)

南フランスの春は早い。アーモンドの高木からひらひらと花弁が散りまるで季節外れの雪吹雪の様だ。オスカルのお腹の子も順調に育っていて二人はもうあと半月程で親になるという不安と幸せをかみしめている。
「アンドレ,手を...」  
お腹を押さえて興奮気味なオスカルが叫んだ。
「ど...どうした? 痛むのか?」
「いいや,あんまり勢いよく蹴っ飛ばされた!おまえも触れてみろ。感じるはずだ。」 
「どれどれ...あ! 動いたぞ!何と力強い蹴り方だ。これはきっと男だな。きっと俺に似て良い男になるに違いない!」 
「呆れた奴だ。勝手に男の子にするな。私の子なら女でも元気は良いぞ!」
「それは確かだ。お転婆で負けず嫌いのお嬢様。」
「今はもう奥様だ」
「はいはい、マダム・グランディエ。」  
「なかなか良い響きだ,ムッシュー・グランディエ。」 
他愛ない二人のやり取りを聞きながらすっかり大きくなった牧羊犬のスゼットが足下で骨を齧っていた.

「さてと...俺はラベンダーとローズマリーを取ってくるよ。レモンの出来具合も調べときたいし。」
ラベンダーもローズマリーも胸の病に効くと聞き何時でも新鮮な物が手に入る様にとアンドレが La Petite chaumière の敷地内で栽培している. オスカルの頬に軽く口づけすると彼女のお腹に向かって 
「おまえもがんばれよ...もう暫くのしんぼうだ。」  
と囁いた。


アンドレが出かけたあと、オスカルは茶を淹れた。やっとどうにかこうにか自分の身の回りの世話が出来る様になってきた。洗い物をしたり簡単な食事を作ったりといった農村の女性なら当たり前の仕事をこなせる様になってきた事が誇らしくてたまらない。  
「もっとがんばらないとな...アンドレにこれ以上の負担を掛けない為にも, もうすぐ出会う我が子の為にも。」

居間でゆっくり茶を楽しみながら数日前に届いたロザリーの手紙の返事をしたためる。 ロザリーは危険を覚悟で親王貴族のジャルジェ家へ出向きオスカルの懐妊を両親に伝えてくれた。王室の手前、公けには出来ないとしてもオスカルの両親はオスカルとアンドレの結婚を密かに祝福してくれたし二人の子供が生まれると聞き泣いて喜んだという。心優しく慎ましいオスカルの母が遥か遠くのベルサイユで彼女達を思ってくれている事がオスカルにはよく解っていた。毎日の様に貴族がベルサイユを離れて行く中で国王に忠誠を誓い滞る父とそんな夫の側を離れぬ母。そんな二人を守ってやれない事が心苦しい。 
「最も今の私は足手纏いにしかならんな。」 
オスカルはそっと大きくせり出したお腹に手をやった。今日は先ほどから下腹部と腰が痛む。もともと我慢強いオスカルは持ち前の強い精神力で痛みを遮りロザリーへの手紙の返事を書く事に専念した。その時今までよりも強い圧迫感と共に生暖かい液体がオスカルの体から流れ出た。 
「こ...これは...」  

動揺と混乱の中でオスカルは幼き日の記憶を思い出していた。それは未だ二人が10代の頃厩で仔馬が生まれる所を見たことがあった。 アンドレとオスカルは干し草の上に座って栗毛のアラビア馬を見守っていた。 あの時先ず破水した。馬は苦しそうに立ったり,寝たり,いきんだり...そしてやっと見えてきた子馬の頭と足を使用人が二人掛かりで引っ張りだしてやった。 

「まずいな...わたしも迂闊だった。未だ2週間も有ると思ってこの痛みが陣痛だと考えてもみなかった!」 動けば動く程羊水が流れ出す。 
「ここはひとまずじっとしてアンドレを待つしかないな..」 
するとそれまで隣で寝ていたスゼットがオスカルを真っ直ぐに見つめている。普段の優しい顔ではなく不安と痛みで険しい面持ちになったオスカルが苦しそうに息をしているのを見て何を思ったか窓際の長椅子に飛び乗り,その背もたれから開いていた窓をつたって外へ飛び降りた。 
「スゼット!」
オスカルはスゼットを呼んだが無駄なことは承知だった。いくらスゼットが飛び上がっても外から窓に飛び載ることは無理だ。  
「そうか...こいつはこうやって私達に内緒で外に遊びに行ってたんだな...」 
何度か知らぬ間に外に出ていたスゼットが 扉をガリガリ引っ掻いて入れてくれとせがんだ事が有る。   
「あの時は扉を閉め忘れたのかと思ったがこういう事だったのか...」 
オスカルはこの非常時にそんな事を考えている自分に苦笑してしまった。

*****

「オスカル!!!」  
扉が勢い良く開いて息を切らせたアンドレが走り込んできた。 
「アンドレ!よかった!」  
「オスカル,どうした?びっくりしたぞ。」  
「破水した。どうやらこの子は私に似てせっかちのようだ。二週間も早くおでましとは...」 
アンドレはそっとオスカルを抱き上げて寝台に運んだ。  
「そうだったのか...俺は川辺でローズマリーを摘もうとしていたらスゼットが吠えながら俺の所へ走ってきた。 スゼットは何とも落ち着かない様子で吠えるのをやめない。普段聞き分けが良くおとなしいこいつがこんな態度を取るのは初めてだし...お前はスゼットを一人で外に出す事も先ずないから何か有ったのかと思ってもどってきたんだ。  
寝室に入ってきたスゼットが寝台の横でオスカルを見つめている。 
「良い仔だ、スゼット。アンドレを呼んで来てくれたのだな。ありがとう。」 
スゼットが嬉しそうにちぎれる程尻尾を振った。

******

アンドレは急いで隣の農家へ走りマダム・クレモンを連れて来た。セルジュとポーレットクレモンは中年の夫婦で息子はおらず4人の娘達はもう嫁いでしまったので寂しいらしくいつも二人をかわいがってくれていた。 
「オスカル,セルジュが医者をむかえにいってくれた。それまでポーレットがついていてくれる。」  
「大丈夫さ。あたしだってもう10人もの孫をこの手で取り上げてんだから。さあアンドレ,ここは男のいる所じゃないよ。お湯でも沸かしておいで!」  
アンドレは自分の寝室から追い出されて仕方なく水を汲んできたり 湯を沸かしたりしていた。暫くしてセルジュが医者を連れて来てからは少し落ち着けと勧められたワインを一気に飲みほし寝室の前を行ったり来たり。 

どのくらい経っただろうか..ようやく夕焼けで西の空が紅く染まった頃静寂を突き破る元気のよい赤ん坊の泣き声が響き渡った。 寝室の扉が開いてポーレットがでて来た。 長年の野良仕事で日に焼け深い皺の刻まれた顔をもっと皺だらけにして微笑みながら 
「アンドレ、とっても綺麗な女の子だよ!」 
その言葉に安堵と共にアンドレの眼から大粒の涙が零れ落ちる。 寝室に入るとオスカルが彼の名前を呼んだ。 その声は誇りに満ち一段と優しい響きが有った。 
「アンドレ...私に似ていると思う。金髪で蒼い瞳で恐ろしく元気がよい。」 
オスカルの横に腰を下ろしたアンドレはオスカルの頬に口づけした。彼女の頬も喜びの涙で濡れていた。
「ありがとうオスカル。こんな俺に娘を授けてくれて。」 
「アンドレ…愛している。」 
「俺も愛しているよ。」 
オスカルの胸に抱かれ早速乳を飲んでいる赤ん坊の髪を優しく撫でながらアンドレが尋ねた。 
「この子の名前は?」  
「セシルはどうかな?」  
「聖セシルか…音楽家の守護聖人だな。良いぞ,素敵な名前だ!” 
「良かった! じゃ決まった。おおセシル…私達の娘…」 

オスカルはしずかに微笑んだ。 そして心の中で呟いた。  
「私のアンドレ…聖セシルはね、盲人の守護聖人でもあるのだよ。私達の聖セシルが何時までもおまえを守ってくれます様に…」 


あとがき:ストーリーのタイムラインが前後してしまいすみません。妄想が起きるに従って書いているので...そのうちに年代やストーリーライン別にまとめてみますね。

Crucifix

For non-Japanese speaking readers....




The heavy oak door creaked and a slender, solitary figure of a military officer walked in the dim, candle-lit church.

Her long golden blonde danced on her back as she hastily walked toward the altar and
kneeled.

Her well-tailored blue uniform was stained in dark crimson with dried blood.

After pausing to make a sign of cross, she approached the granite slab, where rows of plain, identical coffins lined.

Among the sea of coffins she found what she was looking for. The resting place of a tall,
raven haired man in French Guards’ uniform. He was her best friend, a protector, a loyal
servant but most of all, he was the love of her life.

Although his uniform was tattered and bloody, his face was serine and peaceful ー
even a hint of smile?

In the dark sanctuary, his handsome face looked as he was asleep. His right eye was closed and his blind left eye was hidden under his satiny black hair. She sat on the cold stone floor and leaned over him. She wondered he would open his beautiful eyes again if she gently
kissed his lips. However she knew his onyx eyes would never smile at her; his passionate lips would never sing her praises again.

She carefully straightened his uniform as she let her tears flow freely from her sapphire eyes. Her tears fell on his body and soaked into the bloody jacket. His muscular body felt so cold
to her touch. It was surreal– only last night she was held tight against this body as they
made love.

“Oh Lord, why have you taken him away from me? I cannot live without this man.”

He was a part of her. Like the air she breathed, he was there with her ever since she could
remember. Together they cried, they laughed and they loved…

“André - My Love, please watch over me. Don’t let me be a coward. Take my hand and
bring me to your side.”

At that moment the moon came out behind the dark cloud and the faint moonlight shone
through the stained glass window – and she saw something glistened around his neck.
It was a thin, silver chain. When she gently pulled it toward her a small crucifix appeared
from inside of his collar. She recognized it as her First Communion gift to him over 25 years
ago.

She smiled through tears.
“André, even in death you are trying to protect me? Can I borrow this for a little while??
Until I see you again.”

She carefully removed the crucifix from his neck and placed it on hers, then tucked it safely
inside of her uniform. She felt her beloved André whispered in her heart.

“See, I am always with you. We are always together….”

She laid her body over his chest and gently stroked his black hair and the beautiful chiseled
face over and over again, singing and whispering softly to him, just like a mother with her
infant.

****************

Hours passed and the old door creaked again. With first sign of the morning light, two men
in French Guards’ uniform came through the door. “Commander?”

Corporal Hulin and Alain de Soissions found her giving one last kiss to her fallen lover.
She slowly raised her head. “Report.” Her face transformed from that of a grieving woman who lost her lover, to that of the Commanding General of French Guards. “Troops all present and accounted for” “Good, we are moving out in 10 minutes”

She stood up and gave one last glance at him. Then walked away to join her soldiers. She
placed her right hand on the crucifix and whispered to André:

“Wait for me, André...”


あとがき:実はこのストーリーは仕事場で思いつき忘れるまえに書きました。ただ仕事場のパソコンは英語しかうてないので英語で書いちゃいました。気が向いたら日本語に訳します。

Camille (カミーユ) 2

Camille (カミーユ)2

「何だってこんなに沢山...?」
アンドレの置いた金貨を見てカミーユが驚いた。
「もう 来ないと思う。明後日出動するんだ。だからおまえも達者でな..いろいろありがとう」  
「へえ〜あんたが兵隊だとは思わなかった!あたしはきっと弁護士か大学教授か何かだと思ってた。」
「俺はただの従僕兼兵卒だよ。最も 屋敷にはもう帰らないだろうけど。」
「じゃあ何処へいくの?」
「そうだな...暖かい所が良い...」

「ね,あたしの頼み聞いてくれる?」  
「なんだい?」
カミーユが鏡台の小さな箱を開けた。
「これを...母さんの貝殻を海に帰してほしいの。」 
白い貝殻を愛しそうに撫でながらカミーユが言った。  
「あたしの母さんは海の向こうの南の国で生まれたの。 結ばれない恋をして苦労のあげく 早死にしちまった。」
遠い所を見るカミーユの緑の瞳にかすかな光がともった。
「もう顔も覚えてないけどこれは母さんがくれたんだ。でもこんな薄汚いとこにおいとくより海に帰してあげたくて...」

「じゃあそれはもう少しおまえが持っていろ。出動が終わって俺が生きてたら取りに来るよ。」

カミーユは静かに微笑んで頷いた。男なんて信じないけど...この男だけは信じたいのは何故だろう。 
「約束だよ!」
カミーユは長身の黒髪の男の後ろ姿をいつまでも見送っていた。

**********

夏が終わり秋も深まる夕暮れに男は娼館にやって来た。 客としてではなく 女との約束を守る為に。銃創もまだ完治していない体をかばいながら見慣れたパーラーを訪れた。 いつものマダムが彼を見た瞬間悲しい眼をしたのは気のせいか? 

「あんた、カミーユはもういないんだよ...」 
男が何も言う前にマダムが言った。 
「ちょっとこっちへ来てくれるかい?」  
マダムは豊かな胸の間から真鍮の鍵を取り出して机の引き出しを開けた。
「カミーユは酔っぱらった客にからまれて刺されちまったんだよ。 息を引き取る前にこれを あんたにって...」 

マダムがアンドレの掌に白いハンカチ包みを渡した。そっと開いたハンカチからは白い貝殻がひとつ燭台の光をうけて青白くかがやいていた。 幸薄い娘の涙のように...



Camille (カミーユ)



アンドレはいつもの用にショコラを載せた銀のトレイを片手に主人のドアをノックした。
「アンドレか? 入れ。」
オスカルの声が弾んでいる。2人で過ごす夜のひと時が待ちきれない。並んで長椅子に腰掛けるとお互いの唇を求めあった。
「この懐かしい香りと力強く逞しい胸に気がつかなかったなんて…私は何て鈍感なんだろう!もう私はこの広くて優しい胸の中でなければ生きていけない!」
アンドレは蝶の羽ばたきの様に甘く優しい接吻をオスカルの蒸気した頬からその白く輝く様な首筋に落としていた。その暖かで甘美な刺激がオスカルを酔わせたがアンドレの指が彼女の胸元のボタンにかかった途端にオスカルの肩が硬直するのが解った。 オスカルは止めなかったがアンドレはその手を離して黄金色の髪に口づける。 「さあ...今夜はもう遅い。 おまえも疲れているだろう...休んだ方が良い。」 
手を差し伸べるアンドレに素直に頷いてオスカルは寝台に横になった。 
「おやすみオスカル。」 
アンドレの黒い瞳が切なそうに何かを訴えていたがそれにオスカルは答えてあげることができなかった。

アンドレがそっと部屋を出ていった後オスカルは寝台の中で目を開けたまま苦悩していた。 アンドレへの気持ちに迷いは無い。 彼を確かに愛している...誰よりも激しく。 彼に全てを預けたいのに。今まで女である事をひたすら押さえて生きてきたオスカルには女と男の愛の駆け引きなどわからない。 いくらアンドレを求めていても自分からその鎧を取り去る事は直ぐにはできない。 
「私はなんて意気地なしなんだ! アンドレは私への誓いを守りぬこうとしているのに。 こんな私を許してくれ..もう少しだけ...」

オスカルの部屋を出たアンドレは無意識に厩へ向かっていた。 永い間見つめ続けてきた愛しい人。 決して許されないと諦めていたその唇に触れた今はもうこの高ぶる心を抑えて眠る事はできない。  
「ああオスカル! 俺はもう気が狂いそうだ!」  
アンドレは馬を駆り夜更けの道をパリへと向かった。 オスカルへの誓いを守るために...

******


パリの小さな酒場で一杯飲んだ後、アンドレは裏通りの娼館に足を運んでいた。 そこはオスカルの婚約騒動が起きた頃通いだした場所だが2人の愛が実ってからはもっと頻繁に訪れる様になってしまった。アンドレが薄暗いパーラーに足を踏み入れるといち早く何人かの娼婦が近よってきた。 安い香水と粉の匂いが鼻を突く。アンドレは愛想よく微笑んでいるマダムに一言 
「カミーユ?」
と訪ねると無言でマダムの指差す部屋の奥の方へ歩いて行った。

アンドレの前に佇む女は黒く艶やかな髪に深い緑の瞳で刺す様に彼を見つめて言った。
「あら,また来たの?」
ジプシ−の血が流れているというオリーブ肌の女は未だ年若いが生きる事の苦しみを知りぬいた様な翳りがある。カミーユの後を付いて階段を昇ると突き当たりに彼女の部屋が有った。寝台と小さな鏡台しか無い殺風景な部屋で無造作にドレスを脱ぎながらカミーユが尋ねる。 
「何か飲む?」 
「いいや,何もいらない。」
自分の服を脱ぎ捨てるとアンドレはカミーユを抱いた。その目を閉じる訳ではなく,女を見る事も無く,機械的に動作だけが進む。

別にこの女でなくても良い。ただこの女を選んでしまうのは面倒な会話も何もいらない。ただ俺が必要な物だけをくれるから。そして俺はしっかりとこの目を開けたままこの女を抱こう。眼をつぶればおまえへの欲望を俺の脳裏から引き離す事などできなくなるから。たとえ俺の想像のなかでさえ無垢で気高いおまえを汚したくは無いんだ...

******


又この男が来た。 こんな男前なのに...何だってこんな場末の娼館へくるんだい? ここらの客と違って品がいいし身なりだって上等だし、金払いも良いし...冷たい訳でもなければ乱暴でもない。 もっと良い所でいくらでも遊べるのに。 それにしても本当に性欲を処理するだけの営みね。 私は気楽で良いんだけど...きっとこの人の心の中には触れる事の出来ない愛する女がいるんだろうな...

事を終えるとすぐに男は起き上がった。 
「ねえ...泊まっていってもいいのよ..もう遅いし。」  
「いいや大丈夫さ...金はここに置いておく。 ありがとう。」
振り向きもせずに男はドアに向かった。  
「とても綺麗なんでしょうね...あんたの思い人。」 
ドアに掛けた男の手が一瞬止まった。 嫌だ。 あたしなんだってこんな事聞くんだろう。でもあたしが思った通りのようね。 
「あんたの思い届くと良いね。」 
あたしの言葉にその男は振り向いた。 
「ああ,ありがとう。」 
男は微笑んでくれた。初めて見る男の微笑みは眩しいくらい。 この場所には似合わないほどに。

**********


アンドレはベルサイユへと帰路についていた。
「ああオスカル...俺はこれ以上どこまで自分を抑えられるか解らない...おまえに触れる度におまえとの誓いを破ってしまいそうだよ...」

煌めく星を見つめながらアンドレは深く溜め息をついた。 




Epiphany

腕を組んだオスカルとアンドレが 田舎の教会の石段を下りて行く。ジャルジェ家で行きつけたベルサイユの教会に比べればとても質素で小さいが年老いた神父はとても暖かく2人を迎えてくれた。 目立ち始めたオスカルのお腹を見て, 赤ん坊の洗礼の日取りを心配してくれた。

二人は田舎道をゆっくりと歩く。アンドレは 海の方から吹く風にオスカルをいたわりながら
「寒くないか?」
と自分の外套を脱いでオスカルの肩に掛けた。 
「私は大丈夫だ。自分こそ風邪をひくぞ!」  
それでもアンドレは1歩も譲らない。 
「おまえはこの頃昔以上に頑固になったな。」 
オスカルは諦めた様にアンドレの肩に自分の頭を預けながらふふっと笑った。

アンドレの腕の中には小さな布袋が大事に抱えられていた。布袋の中には老神父が清めてくれた小さな石灰石の塊と香、そして聖水の入った小瓶。

近所の農民が La Petite chaumière に着くと居間で寝ていたスゼットが目を覚まし大喜びで2人の周りを駆け回る。アンドレが足を取られぬ様にオスカルが 伏せを命ずるとスゼットがアンドレの左側に伏せた。アンドレはスゼットを左手で撫でながら, 
「良い仔だ」 
とほめた。 
「おまえの女主人よりもずっときき分けが良いな。」 
と心の中で思った。オスカルは子供が新しいおもちゃの包みをあける様に目を輝かせて布袋の中身をキッチンテーブルの上に置く。先ずは石灰石。
「よし,俺がおまえを抱き上げるから,おまえが書いてくれ。」 
アンドレが壊れ物を扱う様にそっとオスカルを抱き上げるとオスカルは玄関の扉の上に石灰石で  
“17+C+M+B+91” 
と書いた。次にアンドレが静かに祈りを捧げる中でオスカルは  
“Christus Mansionem Benedicat”
と 囁きながら書いた。

思えばこの公現祭の儀式を2人で行うのは初めてだ。ジャルジェ家ではいつもオスカルの母と執事やアンドレの祖母などが毎年行っていた。La Petite chaumière ではオスカルが一応主婦(?)なのだからこの家を清め神のご加護を祈るというのは当たり前だろう。満足げにその儀式を済ますと次に燭台の火を使って香を焚いた。 乳香と没薬の甘く穏やかな香りが部屋中に立ちこめて行く。 
「何時嗅いでも落ち着く香りだな...」  
オスカルが目を閉じて深く胸一杯にその香りを吸い込んだ。アンドレは内心ほっとしていた。パリを出た頃のオスカルの胸の病は最悪状態でこのような煙や香の刺激は喀血に繋がっていただろう。彼女の病が大分良くなっている証拠である。 
   
「じゃあ聖水は俺がやる。」
アンドレが祈りを捧げながら小さな田舎屋中をあるき回り聖水を蒔いた。慣れた家の中をすべて覚えているアンドレは不自由無く家の中を歩き回れる。

「これで我が家も安泰だ!」 
アンドレは空の瓶をテーブルに置いた。オスカルはその逞しい背中に両腕をまわして抱きつき 
「はい,旦那様。」 
とおどけた。オスカルの両手を自分の両手で上からそっと包みながらアンドレもおどけて行った。 
「はい、奥様。」  

幸せな2人のまわりで公現祭の午後は静かに過ぎて行く...


Fin



あとがき:今日は公現祭です。我が家で家の御清めとご加護の儀式をしていたら,2人が仲良くこの儀式を行う妄想がムクムク...(笑)

ちなみに 17はその年の西暦の最初の2けた、CはCasper , MはMelchior、BはBalthasar (キリスト様のご生誕の際に訪れた東方の三博士の名前)を意味しています。そして91はその年の西暦の最後の2桁。間の+はプラスではなくて十字架です。

オスカルが書いた “Christus Mansionem Benedicat” は 「この家に神のご加護を" という意味です。



 

”牧羊犬”のモデル

家のホワイトシェパードです。”牧羊犬”のモデルの母犬と3匹の子犬達。スゼットのモデルは真ん中の女の子(勢いよく飛び跳ねてる仔です)本名は "Lily" です。母犬は "Konstanze" (私の大好きな A. Mozart の奥様の名前)その後が "Alexei" 君 そして一番最後が "André" 君です!(笑)


牧羊犬(2)

「痛いっ!」
暖炉の前の揺り椅子で子供の肌着を縫っていたオスカルが叫んだ。
「大丈夫か?」
台所からアンドレの心配そうな声が聞こえる。
「ああ,大丈夫だ。針で指を刺した。こういった手仕事は私には向かん!」  
よく見ると小さな肌着の縫い目は余り真っ直ぐでは無いし何度もやり直した所は布が少し汚れている。オスカルは縫いかけの肌着をテーブルの上に置いて溜め息をついた。 
「だいたい私は女だというのに女らしい事は何一つ出来ない!」 
アンドレがオスカル を後ろから包む様に抱きしめた。 
「気にするなオスカル。お前の女らしさは俺が一番良く知っている。それより気分はどうだ?」  
少しだけ大きくなり始めたオスカルのお腹に彼の大きな 掌を優しく当ててアンドレが訪ねた。
「ああ順調だ。もう吐き気も無いし咳も出ない。」  
アンドレの執拗な健康管理のおかげでオスカルの顔色は良く咳血ももう何ヶ月も無い。パリを離れ,きれいな水と空気の中での生活が効果を現したのだろう。 
「これは俺がやるからお前はスゼットの散歩を頼む。」  
白い牧羊犬のスゼットはここ数ヶ月の内に倍の大きさになった。毎日の様にアンドレが罠で捕まえたウサギや野ネズミ、そして小川で取った魚を食べさせたおかげですくすくと育っていた。2人で少しずつ 伏せ, 待て, 来い などを教えて未だ子犬なりにその賢さを見せてくれる。今までは垂れ下がっていた耳もピンと立ち上がり,未だ小さいながらもあの日見た母犬にそっくりになってきた。オスカルが立ち上がると嬉しそうに彼女の足下に走ってくる。
「よしスゼット、散歩に行こう。」  
オスカルがスゼットと外に出るとアンドレは作りかけの肌着に触れてみた。可哀想に大貴族のお嬢様が俺と一緒になった為にこんな事もしなければいけないなんて。もともと手先の器用なアンドレは手際よく肌着を縫い上げていった。

暫くしてオスカルがスゼットと戻ってくる頃には2枚目の小さな肌着が出来上がるところだった。それを手に取ってみたオスカルは涙ぐんだ。 
「お前は何だって上手だ。それに比べて私は何一つ出来ない。お前を喜ばせてやる事もできない...」  
アンドレはオスカルの頬に口づけを落とし、こぼれる涙を優しく吸い取った。 
「そんな事は無い。お前がいてくれるだけで俺は幸せだ。それに今お前はお前にしか出来ない素晴らしい事をしているじゃないか。」   
愛おしそうにオスカルの黄金色の髪を指で透きながら囁いた。  
「私しか出来ない事?」  
「そうだ。お前の中には俺たちの愛の結晶が息づいている。こんな素晴らしい事はないだろ?」  
オスカルの蒼い瞳に幸せそうな輝きが戻った。 
「だからお前はこの子供の事だけを考えていてくれ。それに...」 
 
「それに何だ??」  
オスカルが不思議そうな顔をアンドレの方に向けた。
「お前は何時でもおれを喜ばせてくれるじゃないか...」  
アンドレが悪戯っけたっぷりに微笑むとオスカルの体がふわっと浮いた。 アンドレが彼女を横抱きにして寝室へと向かう。オスカルは耳たぶまで赤くしながらその細い両腕をアンドレの首に巻き付けて彼の逞しい胸に体をあずけた。その仕草が何とも愛らしいとアンドレは思うのだった。 2人の後を追って寝室の方に走ってきたスゼットの前で扉は閉まりそのまま長い事閉ざされたままであった....
sidetitleProfilesidetitle

Missy

Author:Missy
はじめまして!Missy です。日本語はまだまだ未熟ですが,ここはそんな私の妄想で暴走している AO主義のベルばら二次創作サイトです。
Please Enter at your own risk!

sidetitleMissy's Break Roomsidetitle
This is a message board for my guests!
sidetitleLinksidetitle
sidetitleLatest journalssidetitle
sidetitleLatest commentssidetitle
sidetitleLatest trackbackssidetitle
sidetitleCategorysidetitle
sidetitleMonthly archivesidetitle
sidetitleYou are the visitor number:sidetitle
sidetitleCurrent Visitorsidetitle
sidetitleSearch formsidetitle
sidetitleFriend request formsidetitle

Want to be friends with this user.